薬とリアのオスティナート

1/2
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
オスティナート:音楽で一定の音型を何度も反復する技法 「リアちゃん」 「可愛いね!」 「彼氏いるの?」 チラッと リアの視線は柊斗の様子を伺ってしまう。 視線につられて茶化してる仲間も柊斗を伺う。 集まる視線を受け流す柊斗の不機嫌な顔が リアを不安にさせる。 「怖い顔すんなよー」 「なぁ、リアちゃん」 力なくリアは笑う。 それを見た柊斗はふんっとそっぽを向いた。 そっぽを向いた柊斗の横顔は 鼻筋がスッと高かくて美しい。 リアはその美しさに 吸い込まれるように見入ってしまう。 見入っているリアの儚さももまた この世のものではないかのように美しかった。 人並み外れた白い肌によく似合う 透けるような淡い髪色が 一瞬の清涼感を誘う風になびく。 たちまち、男どもがどよめく。 「帰るぞ」 どよめきを気に掛ける事なく 柊斗の透き通った声がリアの歩行を促す。 そんな時、 リアは世界で一番幸せそうな顔で笑った。 二人は、幼馴染だった。 生まれた時からずっと一緒だ。 柊斗はリアのこの可愛らしさに たまらなくイラついていた。 昔は何も考えずに ずっと、一緒だったのに。 リアには幼い頃からの習慣があった。 それは1日1回1粒の薬を飲む事だった。 決して忘れてはならない 生命を繋ぐ為の薬・・ ある夏の午後 柊斗は少し話すようになった女に 告白されていた。 頬を染めて 柊斗の答えを待っている。 高揚している女とは裏腹に 柊斗の女を見る目は冷たかった。 と、ふとその目が遠くの一点に視線を飛ばす。 視線の先は 立ち尽くすリアだった。 柊斗は咄嗟に視線を逸らして俯いた。 俯いた柊斗を見て リアは見ていたわけじゃないと 口を開くが声が喉で詰まる。 どうしようもない思いがリアを追い詰める。 まただ・・ また・・・・ リアは自分の声を必死に絞り出した。 「しゅうとっ!」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!