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「タイム終了、ゲーム再開」
僕はサーブの瞬間、ラケットを裏返すと、しゃがみ込みサーブを放った。
テーブル下にしゃがみ込んで、一見強い下回転をかけているように見せているが裏面はアンチラバー、無回転ボールを放つことができる。
相手男子が勘違いしてツッツキで返すと、ボールは大きく浮いた。
すかさず春香先輩が強烈なスマッシュを決めた。
「よーし!」
フェイクサーブ、これまで見せていなかっただけに見事に騙すことができた。
その後、サーブのたびに表裏を切り替えて相手を翻弄させ、勝利を手に入れた。
「カウントスリーツー、ゲームセット。ありがとうございました」
これで四回戦突破、僕達は準決勝に進むことができる。でも……初春ちゃんとの約束は。
初春ちゃんが僕たち二人のところに挨拶に来た。
「タックン、次も頑張ってね。負けてデートはお預けになっちゃったけど、今度こそは勝ってみせる」
「初春ちゃんも手強かったわ。でも私は負けない、いつでも受けて立つわよ」
いつの間にか、戦いの中で二人は仲良しになったみたいだ。涙を流す初春ちゃんを春香先輩は優しく抱擁した。
「春香先輩、初春ちゃん、ありがとう。でも僕はラケットを見て悟ったんだ。なぜこんな運命が卓球大会に待ち受けていたのか、そして僕の進むべき道を」
「それは……どちらかに決めたということ?」
「はい、夢は諦めちゃいけないんだって。シェイクハンドはラバー二枚貼り、両面をうまく使いこなすことで勝利をもたらす。僕は春香先輩の水着姿も、初春ちゃんの浴衣姿も見てみたい。だから……ダブルス彼女ということで」
春香先輩と初春ちゃんの強烈なツインスマッシュが僕の両頬に炸裂した。
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