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「え、僕が春香先輩とダブルスでペア?」
「お前はうちの部で唯一の左利きだからな。フォア、フォアで交互に打ち込めるのはかなり有利だ。春香、君もそれでいいな?」
彼女は卓球部女子のエース、僕は左利きで彼女の前陣速攻型の攻めの妨げにならず、うまくサポートできることから男女ダブルスのパートナーに選ばれた。
それほど大会で強くなかった僕を見て、春香先輩は少し渋い顔をしていたことを覚えている。
ポニーテールで髪をまとめた彼女は、快活な笑顔で部内の人気者だ。まさか僕のような日陰者とペアになるとは想像もしなかっただろう。
でもウジウジしていた僕を気遣って、声をかけてくれた。
「それじゃあ、名前で呼び合おうか。私は春香でいいよ。君はえーとたしか」
「卓夫……です」
春香先輩はプッと吹き出した。
「なんか卓球オタっぽいね、よろしく」
少しでもツボにハマってくれたのなら本望だ。手を差し伸べてくれたので握手をした。
初めて握った女子の手は柔らかく、体の芯がジンジンと痺れるのを感じた。
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