双春のラブオール

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「ラブオール、ゲーム開始」  誰でも一度は夢見ると思う。  好きな子に気持ちを伝え、「うん、私も好き」なんて言ってもらいたいと。  でも内気で何の取り柄もない僕みたいな輩は勇気がなく、ただ時間だけが過ぎ去っていくもの。  なのに、なんで今。自分から告白どころか、好きな女子二人から告白されるなんて。  恋愛経験ゼロの僕がこの局面をどう乗り切ればいいのか、誰か教えてほしい。 「サーブをお願いします」 「あ、すみません」  審判から注意が入った。集中しろ、今は試合中だ。  卓球男女混合ダブルス地区大会、四回戦。これに勝てば準決勝に進むことができる。  横を見ると、春香(はるか)先輩が卓球台の下から僕にサインを送ってきた。  ハートふたつ……ラブオールって、それサイン? メッセージ? どう戦えばいいの? わかんないよ。  ちょいちょい動く指先がやけに(なまめ)かしい。  ゼロ対ゼロを意味するはずのラブオールが、「愛がすべて」としか読め取れなくなっている僕はかなりの重症だ。
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