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プロローグ
闇に散りばめられた星たちの合間を絶え間なく流星群が流れてゆく。
それを仰向けで見ていた春花の顔の両隣に両手を付き覆い被さった仁は妖しい微笑を浮かべた。春花の鼓動が大きく早く波打つ。
「大好きだよ、春花」
低くい声でささやく仁に春花の身体が熱を帯びた。
【この人は朱くんを殺した犯人かも知れない】
そう思い恐怖を抱きながらも仁に惹かれる気持ちがその恐怖を上回る。
それでもかろうじて働く理性が頭の片隅で呟く。
【別れたほうがいい】
だがいざ言葉にしようとすると声が出ない。
アオマツムシの、リリリリリと羽を鳴らす音が二人の沈黙を埋めた。
仁の目を探るように見る春花に微笑みながら顔を近づけた仁は、春花と唇を重ねる寸前に「ずっと愛してる」とささやいた。
唇から仁の熱と春花の熱が溶け合い、快楽が全身を駆け抜け、仁に全てを支配されたような感覚に陥った春花は諦めたように目を閉じた。
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