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運命を知る彼女
頭が痛い。
そう感じると同時に一気に目が覚めた。
ここはどこだろう。
暗闇に慣れてきた目が柊晴を捉える。少しほっとして手を伸ばして揺らした。
「柊晴。柊晴。起きて。」
声をかけると案外あっさりと柊晴が目を覚ます。
「…なに。ここ。」
覚醒していない声だが異変を感じ取ったようで、驚いたように目を見開いたのがぼんやり見えた。
「本当になんだよここ。」
「ね、何でここにいるか覚えてない?」
「…お葬式に出て、俺の部屋に来てそこから…。…母さんがお菓子を持ってきた。それを食べて意識を失った。」
「意識を失ったって…。寝ちゃったんだよ。ほら、泣き疲れてたもん。」
「透。」
咎めるような声に口を閉じる。
私が動けないでいると柊晴が立ち上がり電気をつけた。
急に明るくなる視界に瞬きを繰り返すと、この部屋に見覚えがあることに気づく。
「ここは去年亡くなったおばあさんの家だ。」
「は、早く出ないと…。」急いで玄関へ向かう。
引き戸に手をかけて力を込めるが…開かない。
「柊晴…。」不安げな声が洩れる。
険しい顔で柊晴が黙り込みさらに不安になる。
「あ、起きたの?透。」
気配もなく、急に戸の外から声が聞こえた。
お母さんの声だ。安心するはずの声が、この状態でいつも通りの声なことにぞっとする。
柊晴が手をつかみ、式台へ引き上げる。私を守るように力を込める柊晴の手も震えていた。
「お、かあさん…?ね、外に出られないんだけど…。」
恐る恐る声をかけると普段と全く変わらない声が答えてくる。
「おばあちゃんが思ったよりも早く亡くなったでしょう?だから急ぐ必要が出てきたのよ。」
「何を…?」
「次の巫女の誕生。」
「…どういう、こと…?」
「巫女様の予言でね。
『この時に産まれてきた2人を運命の相手とする。そしてこの運命のふたりの間に生まれた子こそが次の巫女となる。』
って。」
「私と、柊晴の子が次の巫女…?」
「まだ俺ら高校を卒業したばかりの子供だけど。」
「それがそうも言ってられないのよ。巫女はこの島で大切な存在だから、いないと島が存在できないかもしれないでしょう?
それに、巫女様の予言には続きがあってね。
『運命のふたりは25歳になるまでに同時にこの世を去る。それまでに次の巫女を誕生させよ。』」
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