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新入社員
2年半前に新入社員が私の元に二人も仮配属された。
入社5年目で、しかも二人の新人を同時に面倒を見ると言うのは、我が社にとっては珍しい事。
これは、自分の仕事が認められたことだし、指導出来る立場にあると認められたと言って間違いない。
その事実に一瞬、有頂天になってしまいそうになったけど、現実はそんなに甘くは無いことは、昨年のA先輩を見ていてよく知っている。
普段の仕事をいつも通りに熟しながら、更に会社の未来とそれなりに経費が掛かった新人を退職させずに育てる。これは、重労働で神経をすり減らすことは間違いないことなのだ。
私は、A先輩が陰で胃薬を飲んでいたこともよく知っている。
だから、最初は何とか断れないものかと私だって考えもした。
でも断るなんて、そんな大それた勇気が私に出るはずもない。
結局、大きな不安を抱えたまま、ズルズルと満面の笑顔で快く受けてしまうことに至ってしまった。
そんな私の不幸を、自分の所に新人が来なかったことを良いことに笑っていたA先輩。
私は、仕返しに社長がお土産に買っ来てくれたおやつを、A先輩には一番小さいのを配ってやった。
ざまあみそ汁!
それで気分が晴れた訳ではないが、実際に二人の姿を目の前にするとそんな不安は何処吹く風。
翌日からが楽しみになる私の安直さは、お調子者の母親譲りだろうか。
私は、二人を見た瞬間、良き先輩になることを固く誓ってしまっていた。
だって、あの初々しい目の輝きと、改まった姿勢を目の当たりにしてしまっては、こちらの気持ちまで輝いてしまう。
それに、リクルートスーツでの出社は反則だ、可愛すぎるでしょ。
そんなことで気持ちが前方へと回れ右した私は、一気に新人様大歓迎モードへと大変換するに至ったのだ。
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