10人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「すみませーん」
個人でやっている店だ。中に人がいるかもしれない。
俺は入口のガラス戸をドンドンと叩いて、声をかけてから扉に手をかけた。だが、やはり鍵がかかっていて扉は開かなかった。
反応がないか少し待ってみた。
ガタン…
中から物音がした。
人がいる…いや、ゾンパイアかもしれない…
俺はもう一度声をかけてみた。
「すみません、薬が欲しいんですけど…」
ガタン…ガタガタ…
気配はすれども、人が出てくる気配はない。
「ごめんなさい、急いでて…人の命がかかってるんです!」
俺は、一応そう断りを入れてからガラス戸を割って、店内へと入る。
店内にいるカエルの置物が、ニコニコと横目でその始終を見ていた。
ピロン…ピロロン…
来客時に店内に知らせる軽快な音が鳴った。
そして、俺が店内に足を踏み入れた瞬間、瞳を白く濁らせた老婆が俺に襲いかかってきた。
「きえぇえーー!!」
大きく開かれた口内には、歯が一本もなかった。
それもそのはず、それは、彼女が叫んだ瞬間にスポーンと俺に向かってカスタネットのようにカタカタと音を鳴らして飛んできたからだ。
老婆は手に持った竹刀を、俺にバシバシ振り下ろしながら「わしゃ、まだあの世には行かんぞ」とシワシワの口をもごつかせながら叫んだ。
あぁ、人間だ。
瞳が白く濁っているのは、白内障のためか…
「あの!イテテ…俺、人間です…感染してませんっ」
「はにゃ…」
最初のコメントを投稿しよう!