パンデミックの世界で

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 「俺、風邪薬を探してて…ありますか?」  「あ~…無いよ」  老婆はそう言って俺を一瞥して「こんなにしてからに…」と、割れたガラス戸の破片を竹刀でつついている。    ここにも無いのかよ…  俺は絶望し、脱力してその場に座り込んだ。    終わった…  綾…ゴメン…ゴメンゴメン…綾…  俺の視界はぼやけて、大粒の涙が頬を伝った。  「ドアのぉー修理じでもらうがらぁー」  老婆が妙な動きをし始めて、俺を見てニヤリと笑った。  その口には鋭い犬歯がのぞいて見えた。  !!!  ヤバイ…感染してたんだ!?  逃げなきゃ!  俺の意思に反して、体は言うことをきかなかった。    カクン…    立ち上がろうとして膝が抜けた。  老婆が血色の悪いシワシワの口を大きく開けて、俺の首筋目掛けて噛みついて来ようと迫ってきた。    ―――もうダメだ!  そう思って目を瞑った瞬間、耳元から「グエェッ」と老婆が潰れた蛙のような声をあげた。  俺は恐る恐る目を開けてみた。  目の前にはメロン頭がいて、老婆はカエルに潰されていた。  カエルは表情一つ変えることなく、俺をニコニコと横目で見つめた。  「あぁぁぁ…助かったよ、メロン君…カエル君…」  「…うん」  メロン頭は俺を助けた英雄なのに、どういうわけか浮かない顔をしていた。    
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