10人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「俺、風邪薬を探してて…ありますか?」
「あ~…無いよ」
老婆はそう言って俺を一瞥して「こんなにしてからに…」と、割れたガラス戸の破片を竹刀でつついている。
ここにも無いのかよ…
俺は絶望し、脱力してその場に座り込んだ。
終わった…
綾…ゴメン…ゴメンゴメン…綾…
俺の視界はぼやけて、大粒の涙が頬を伝った。
「ドアのぉー修理じでもらうがらぁー」
老婆が妙な動きをし始めて、俺を見てニヤリと笑った。
その口には鋭い犬歯がのぞいて見えた。
!!!
ヤバイ…感染してたんだ!?
逃げなきゃ!
俺の意思に反して、体は言うことをきかなかった。
カクン…
立ち上がろうとして膝が抜けた。
老婆が血色の悪いシワシワの口を大きく開けて、俺の首筋目掛けて噛みついて来ようと迫ってきた。
―――もうダメだ!
そう思って目を瞑った瞬間、耳元から「グエェッ」と老婆が潰れた蛙のような声をあげた。
俺は恐る恐る目を開けてみた。
目の前にはメロン頭がいて、老婆はカエルに潰されていた。
カエルは表情一つ変えることなく、俺をニコニコと横目で見つめた。
「あぁぁぁ…助かったよ、メロン君…カエル君…」
「…うん」
メロン頭は俺を助けた英雄なのに、どういうわけか浮かない顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!