パンデミックの世界で

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 管理室の小窓を背に、若い男が立っていた。  その男は管理会社の制服を着ていた。先ほど対応してくれた男だろう。  激しい物音と、叫び声は何だったのか…  「あの…俺、さっきのエレベーターの…」  俺はその男の背中に向かって話しかけた。すると男は、首を手で押さえてゆっくりと振り向いた。  その男と顔を合わせた瞬間、俺の背筋は凍り付いた。  男の瞳は濁った灰色で瞳孔は縮こまって小さく、焦点が定まっていなかった。それに首を押えた手の隙間からは真っ赤な血液みたいなものが見えた。  「あー…エレベーダぁー動ぎましだかぁ…」  男はそう言って、不気味に笑った。その男の口からは鋭い犬歯がのぞき見えた。  何こいつ?変な奴とは思ったけどやべーな…    首の血液のようなものは気になったが、怪我だったとしても笑っているくらいだから大したことはないのだろう。そして瞬時に、俺の中の何かが"こいつとは関わるべきじゃない"という信号を出した。  「じゃ、急ぐんで」とその場から立ち去ろうとした時、その男が管理室から飛び出してきた。そして、さらにその背後に似たような雰囲気の…いや、もっと血色の悪い肌の気味の悪い女(ケイコと思われる)もついて来た。    「までぇ…」「あぅぁー…」  俺は反射的に彼らから逃げた。  二人とも片足スキップのような変な走り方で追いかけてくる。  なになに…何なんだ??  
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