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彼らの口からは尋常じゃないほどのヨダレが出ていて、追いかけてくる様子はまるで映画に出てくるゾンビのようだ。
マンションの出入り口の自動ドアがスッと開いてくれないので、俺は彼らに追いつかれそうになった。
外に飛び出すと、気持ちが焦ったせいか足がもつれて転んでしまった。
痛みは全く感じなかったが、男がそこまで迫ってきた。
ひぃ!
男が俺に襲い掛かろうとした瞬間、ドカン!と大きな音がして、男が地面に倒れ込んだ。そして、その男の後ろにいた女も巻き込まれて倒れる。
「大丈夫カ?噛まれナカッタカ?」
キャリーバッグを持った二つお団子ヘアにピンクのチャイナドレスを着た少女が俺を見下ろしていた。その少女がキャリーバッグで男を殴りつけてくれたのだ。
また現実離れしたキャラクターの登場に、俺は何度も瞼を瞬かせた。
「ジュジュ…急にいなくなったと思ったら何やってんのぉ?」
厚底の丸眼鏡をかけた小太りの大きなリュックを背負った少年がヨタヨタと駆け寄ってきた。
「メロン頭、あんたが遅いのヨ」
「こいつ、噛まれてない?」
「危なかったけど大丈夫ヨ」
何、何が起こっているんだ?
俺はもう何が何やら状況を理解できずにいた。
だが、そんな状況をお構いなしに倒れている男女はうめき声をあげる。
「ヤバい!アンタも逃げるヨ!」
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