パンデミックの世界で

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 俺たちは、建物の物陰に逃げ隠れた。  どういうわけか、街の中は閑散としていた。  ハァハァと荒げた息が整わないうちに、俺は「何が起こってるんだ?」とジュジュに尋ねた。  「パンデミック…未知のウィルスが広まッテ、感染した人間はさっきの男みたいになるのヨ…」  昨日まで普通に生活していたのに、そんなことある?  ジュジュはふぅーと息を整えて、続けて話し始めた。  「感染者はって言われてル…ゾンビとバンパイアのハイブリット。生物兵器のために研究されたウィルスが研究員に感染したのヨ。感染経路は主に二つ。吸血されることでその傷口からの感染と、濃厚な接吻による経口感染。吸血からの感染だと、ものの数分でゾンパイアになル。経口感染はゾンパイアになるまでは発症から12時間。初期症状は風邪に似てル。ひどい頭痛と咳嗽、変声…それから光過敏ヨ…大体は感染に気付いていない恋人からうつるネ。最初の感染者の研究員がだったのが悪かったネ…あっという間に広まったヨ」  俺は全身から血の気が引いた。  「そんな…まさか…」  俺は今朝の綾とのやり取りを思い出す。  綾の症状…  嘘だ、そんなこと…  俺は慌ててポケットからスマホを取り出して、綾に電話をした。  しつこく鳴らすが応答はない。  先ほどの感染した男の様子を思い出して、全身が粟立った。
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