01 妊活妻

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01 妊活妻

  『今日も仕事遅くなる、夕飯はいらない』  メッセージが届いたのは、炊飯器のスイッチを押した後。  鍋に入っている汁物はあとは味噌を溶かせば完成だ。肉と一緒に炒める為の野菜も切ってあるし、春雨サラダは冷蔵庫の中。 『わかった。連絡は五時までにしてくれると嬉しいな』とまで打ってから、全て消す。かわりに『OK』のスタンプだけ押した。  エプロンを取って丸めて投げて、ソファになだれ込んだ。  食欲はない、もう明日の昼ごはんにしてしまおう。今日はビールだけでいいや、春雨サラダくらいはつまもうか。  どうせ宏斗が帰ってくるのは日付が変わる頃だろう。  メッセージアプリ開いた、宏斗とのトーク画面を見る。  ――うん、やっぱり送ってる。  宏斗からメッセージが届く前に、私はハートのスタンプを送っていた。  合図は丸無視で、遅くなる、だもんなあ。  それについても言いたいことはあるのに、メッセージですらも言えない。
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