04 悪役妻

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04 悪役妻

   予約してくれていた割烹料理屋はネットで見るよりも素敵なところだった。部屋の大きな窓からはライトアップされた庭園が美しい。六畳ほどの和室は、照明が控えめでムードもある。  やっぱり新しい服を買ってよかった、化粧もしてもらったし髪の毛もセットした。素敵なお店でも気後れしない、いつもの私のままじゃなくてきちんと言いたい事が言えそうだ。  まだ前菜しか運ばれていないが、並べられた小さな小鉢は見た目も味も最高だ。ビールが飲めたらもっといいのだけど、ノンアルコールビールでも十分においしい。 「食べないの?」  一人だけ前菜を食べ切ってしまい、目の前にいる二人に問いかける。 「食べるけど……」  気まずそうな宏斗がこちらを見やる。二人を気にせずに食べていた私を百合は気味悪そうに見た。 「何か話があったんじゃないの?」 「う、うん」  そう言いつつも宏斗は切り出そうとせずにビールを飲んでいるから、しびれを切らした百合が切り出した。 「冬子、本当にごめんなさい」
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