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「探偵を百合にもつけていたの。宏斗とデートしていると思ったんだけど、まさか部長がここで出てくるとは思ってなかった」
写真で百合と腕を組んでホテルに入っていく男は、私と宏斗の元上司であるウェブ広告部の部長だった。
「部長って……嘘だろ」
宏斗は写真を穴が開くほど見つめているが、百合は写真を見ようとはしなかった。覚えがあるのだから、見なくても問題ないだろう。
「百合お前二股かけてたのか?俺と……」
宏斗は百合を睨んでいるが、妻が目の前にいるのによくそんな事を言えたものだ。
「部長との子ができたから俺になすりつけようとしたのか!?」
「ち、違う!これは、別れ話をするために会っていたときのものよ……!だいぶ前に別れたけど、ずっと部長に付き纏われてて困ってたの!私が好きなのは宏斗だけ!」
「じゃあなんで子供ができるんだよ!別れ話するためにホテル入る必要もないだろ!」
二人は私の前で醜い喧嘩を始めた。手持ち無沙汰になってしまい食事をしながら待っていようかと思ったが、そういえばもう前菜を食べ終えてしまったのだった。次の料理をお願いしてもいいだろうか?
「俺は、自分の子供がほしいんだ。部長とお前の子供なんていらない」
宏斗はいつか私を見下ろした時と同じ目で百合を見ていた。
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