05 全ての妻よ、さようなら

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 話が長くなりそうなので部屋に備え付けてある注文用の電話から、この後の料理を一気に持ってきて欲しいと料理をお願いした。もう前菜からかなり時間がたっているので料理はあらかた出来上がっているだろう。 「……子供なんてウソなの、ごめんなさい宏斗。子供ができたなんてウソ。冬子が人工授精したって聞いて、子供ができたら私を選んでくれると思ったから……」 「それこそウソに決まってる」 「本当よ」  百合は自分のスマホを取り出すとフリマアプリを開いた。二人の会話に初めて興味がわいて上から覗いてみると、エコー写真の売買のやり取りが残っていた。フリマアプリはこんなものまで売っているのか。 「買ったの、アプリで」  やっぱり百合の妊娠はウソだった。つい三日前に百合がお酒をぐびぐび飲んでいたことを他の同期から聞いていた。  百合は最低な女だが、バカな女ではない。妊娠しているのに飲酒するとは思えなかった。 「うわ、気持ち悪いなお前。そこまでするか?」  宏斗は青ざめて吐き捨てた。百合の涙は止まらないが、今度こそ本当の涙だろう。
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