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「ああそうだ、マスメディア部の部長にも写真はお渡ししてきたの」
二人は顔を見合わせると今日一番の顔色の悪さになる。
「あなたたちの部長は私の配属が決まる前の教育係をしてくださってたでしょう?相談してみたの、夫の接待や出張が多すぎて不安なんですって」
「そこまでやるのかお前は……!」
「あら、二人が会社の名前を使って写真を送ってきたんじゃない。だから相談しただけ。△△社の吉崎さんにもクレームを入れておいたよ、土日に取引相手を連れ回すなんて今どきハラスメントに当たるんじゃないですか?って」
「……っ!」
「△△社の吉崎さん、適当な名前を作ったと思っていたけど、本当にあなたたちの担当の方だったんだね。人の名前、勝手に使ったらダメですよ」
私は吉崎さんからいただいた名刺を二人に渡してあげた。もっとも吉崎さんはおじさんではなく、三十代くらいの女性だったけれど。結婚指輪もしていたかしら。
「明日、吉崎さんがいらっしゃるそうだから対応お願いね。ああ△△社って、大手代理店にコンペで勝った大きな案件の会社だっけ」
二人はもう何も言わなかったから、私は個室を出た。
廊下を歩き出すと、しばらくして宏斗の怒号と百合の金切り声が聞こえてきたけど気にしない。ああでもやっぱりデザートは食べたかったなあ。
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