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きれいに宙を描いて地面にどさりと音を立てて、どこか間の抜けたうめき声をあげた男が、ほの暗い街灯に姿を現した。このまま逃げよう、と考えながら響は眉を寄せた。
「ちょっと、こんな夜道で女の子を襲うなん……えっ」
たった今ランドセルをぶつけた相手を見下ろして、響は言うべき言葉を忘れた。
どこか打ったのか、うめいている巨漢は確かに先ほど響が重量級のランドセルをぶん投げた相手に違いない。それは間違いない。ただ、そこには大きな問題があった。
「うー……痛い……」
鳥だった。
響の1歩半先に転がってじたじたとうめいているものは、やたらにデカい鳥だった。
それも人間大の、いや丸い体型のせいでさらに大きく見える。
「……きぐるみの、変態?」
ネットニュースで見たことがある。ハロウィンで羽目を外して逮捕されてしまう、あのタイプかな。そう思った響は、徐に空へと突き出ているクチバシを掴んでみた。
「ふぶっ! うぶぶぶぶうっ!」
太い鳥は予想外だったのか、突然クチバシを掴まれパニックになったらしいが、それは響も同じだった。
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