一日だけの二人

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『ヴェネツィアン・ゴンドラ』  パーク内の運河を、ゴンドリエが漕ぐ船で巡る旅。瑛太が行くヴェネツィアを2人で巡る旅。  橋をくぐる時、ゴンドリエに促され、パークを行き交う人に「チャオ!」と挨拶をすると、パークの人々から「チャオ!」と返ってくる。こんなコミュニケーションもゴンドラならではだった。  フィレンツェに実在する橋をモデルにしたという、シーランドで一番大きな橋が見えてくると、頬に冷たい物が当たった。 「わあー」  人々が次々に空を見上げる。 ――雪だ。  掌に乗った小さな雪を瑛太と一緒に見つめる。水分が少なく消えるまでにしばらくかかった。少し積もりそうだねと言う瑛太に詩織は語りかけた。 「フィレンツェは、よく雪が降るんだって。でも積もることはないらしいから、珍しい景色が見られそうだね」 「そうなんだ。調べたの?」 「え……好きな人が行く場所だから……」  初めて口にするという言葉に、小声になってしまう。 「ん? なに?」 「ううん。心亜が言ってたんだよ」  慌てて心亜から聞いた事にした。 「ココア?」 「友達の……」 「ああ!ココアさんね」  違和感を感じながらも自分の計画を実行に移すタイミングだった。
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