目指すは日本代表での自己ベスト

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 200mバタフライ決勝。  ひなは、いつもいる里奈がいなくて、寂しい感じがした。レースを待っている間、里奈と張り合っていたのに、それがないとやる気もなくなってしまう。  こんなにも里奈が刺激を与えてくれたとは、想像もしてなかった。これは里奈に感謝の気持ちも込めてレースしないと。  200mバタフライ決勝のレースが始まる。  ひなは、スタート台の前に立つ。この瞬間が一番、緊張する。  ピーッ、ピッ、ピッ、ピー 「テイク・ユアー・マーク」  ピーッ  プールに飛び込んだ。スタートはまずまず。ここは飛ばし過ぎないように。自分の泳ぎに集中。  スムーズに腕が回る。水の抵抗も少ない。なるべく、静かな音、泡が出ないように。そして、何より大事なのは、ストリームライン。  ストリームラインは簡単にいうと蹴伸びの姿勢。このとき、水となるべく水平になるような姿勢をとると、水の抵抗を減らせる。  50mのターン。まだ、ギアを入れるときではない。自分の泳ぎを丁寧に。  100mのターン。ここで、1段階、ギアを上げる。でも、ちゃんと調整。  150mのターン。ここから、思いっきり泳ぐ。腕がとれてもいいくらいに。  あと25m。よし、ここからだ。  ひなは一気にギアを上げる。 「レース展開が上手い。ちゃんと相手見て、ギアを上げてる」  観客席から見ている里奈は、ひなの泳ぎに目を丸くした。高校生の時の泳ぎとは全く違う。 「短期間でこんなにも成長したのか」  里奈は大きな声で叫んだ。 「いっけー! ひな!!!!!」  ひなは、ギアをどんどん上げていき、ラスト10mくらいで、かなり差が開いた。もう、ひなの1位は確実だ。  ひなが壁をタッチする。  2分5秒01  電光掲示板が表示していた。  ひなの金メダルが確定した。  夢中になってレースを見ていた里奈は、涙を流した。 「なかなか伸びなくて悩んでいたのに、ようやく……」  こうして、インカレは幕を閉じる。 **********  その後、ひなと里奈は切磋琢磨して、水泳を続け、大学4年生のとき、日本代表として世界水泳に選ばれた。  そこでの結果は、メダルこそ届かなかったが、100mのバタフライでは、ひなは5位入賞、里奈は4位入賞だった。ただ、ひなも里奈も自己ベストを更新した。  200mのバタフライでは、ひなは銀メダル、里奈は金メダルに輝いた。  ひなと里奈はこれから、オリンピックを目指して、ときには喧嘩もしながら、お互いに刺激し合って練習に励んだ。 「オリンピックでも私は負けない!」  里奈はにっこりと笑いながら、でも、強い口調で、ひなに勝負を挑む。 「私だって負けない」  ひなも笑いながら、でも、強く言い放った。  ひなと里奈は、オリンピックで、ワンツーフィニッシュを夢見て、今日も練習をする。 ~完~
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