目指すは日本代表での自己ベスト

1/5
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

目指すは日本代表での自己ベスト

 高校2年の夏、インターハイ。  山野(やまの)ひなは、100mバタフライの予選レースに臨む。  ひなにとって一番得意な種目、バタフライ。  正直、100mよりも200mのほうが得意だ。100mは、本命の200mに繋げるための過程で必要なため、エントリーしている。  控室で自分のレースが始まるまで、体を叩いたり、ストレッチしながら待つ。 「優勝は私がもらうよ」  ニヤリと笑いながら、自信ありげに言ったのは、高部里奈(たかべりな)。  ひなの昔からのライバル。  同じ学年で、小学校からずっと切磋琢磨して勝負してきた。学校こそ、違う学校だったが、毎回、レースでは顔を合わせては、バチバチしている。 「いつも、余裕だね」  ひなは緊張していて余裕がなく、里奈のことに構っていられない。  里奈は緊張しないのか、いつもリラックスしている。それが、良いレースになるのかもしれないけれど。 「あんたさ、いつも、リラックスしてないからダメなんだよ」  里奈はひなの肩を叩く。  ひなにとっては、レース前の里奈はうざい。黙っててほしい。 「絶対に里奈には負けない」  ひなは里奈を睨みつけた。強い口調で言ってみたものの、里奈に一度も勝ったことがない。不安になった。  ひなの100mバタフライのレースが始まる。スタート台の前に立ち、準備をする。  ここでも、体をパチパチ叩き、体をリラックスさせる。  ピーッ、ピッ、ピッ、ピー  笛の合図でスタート台に乗る。 「テイク・ユアー・マーク」  この言葉で、飛び込む準備。息をゆっくり吐く。  隣のレーンには里奈。  今日こそ、絶対に勝ってやる!  ひなは心の中で強く思った。  ピ―ッ  プールの中に飛び込んだ。  ドルフィンキックでの潜水から、流れるように浮かび上がると、一気に加速しようと腕を回す。  前半、飛ばし過ぎた。そのため、前半は良いタイムで入ってきたが、後半。ターンした後、急に失速した。前半に飛ばし過ぎて疲れた。  ふと、隣のレーンを見ても里奈の姿が見えない。こんなにも差をつけられたのか。ひなは頭の中が混乱した。  混乱したまま、壁をタッチ。タイムを見るのが恐ろしい。  59秒01  電光掲示板を見て、ひなは目を丸くした。 「これじゃ、予選落ちだし、目指している日本代表の道は閉ざされる」  ひなは悔しさをにじませながら、プールから上がる。  里奈は順調に決勝へと駒を進めた。  ひなは里奈が決勝に進んだことも悔しかった。 「ひな、次、頑張ればいい。200mバタフライは、決勝まで一緒に残って、勝負しよう」  里奈はひなを抱きしめながら、呟いた。  その後、100mバタフライで、里奈は優勝した。  続く200mバタフライでも里奈は優勝。  ひなは100mバタフライでの予選落ちで、心が乱れ、200mバタフライでも、響いてしまい、また、予選落ちしてしまった。  まだ、そのときはという気持ちも強くあって、次の大会に向けた練習にもがあった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!