魔女の薬

1/12
前へ
/12ページ
次へ

魔女の薬

 鏡をのぞくと、くすんだ肌とほうれい線の目立つ女の顔が映っている。  私の顔だ。  どう見ても「オバさん」の顔。  顔に刻まれた皺は、現実を突きつけているようで憎らしい。  仕方がない、もう50歳なのだから。  現在の状況を考えるとため息しか出てこない。     こんなはずじゃなかったのに。  若い頃はそれなりにモテていた。いつか高収入の男をつかまえて、悠々自適な結婚生活を送れると思っていた。  気付けば結婚適齢期はとっくに過ぎていて、旦那どころか恋人もいない。  いつか寿退職することを考えて入社した職場は、既に何十年と在籍している。適当に選んだ仕事に対して熱意が持てるわけもなく、ただ満たされない毎日が続いているだけ。  どこで間違えたのだろう。  若い頃に別れた男たちのことを思い出す。あの中の誰かと結婚していれば、また違った未来があったのだろうか。  少なくとも、今の寂しい状況よりは良い人生を送れていたはずだ。  あの頃に、若い頃に戻ってやり直したい。  あの頃の若ささえあれば。  解決しない悩みに脳内を占領されつつも、夕食の買い出しをするために、家を出た。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加