魔女の薬

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 朝起きてすぐに例の店を訪れると、昨日と同じ少女が店番をしていた。 「おや、昨日ぶりですね、お客様。あの薬はお気に召しましたか?」 「もちろんよ!」  興奮気味に私は答えた。お気に召したも何も、1本であれだけの効果があるなんて、まさに魔法の薬だ。  そんな怪しげなものを売っているこの少女は、魔女なのだろうか。  でも、今はそんなことどうでもいい。私はすぐにあの薬を飲みたいのだ。  早く飲んで、若返りたい。 「ねぇ、あの薬はまだあるわよね? 売ってちょうだい。おいくらかしら?」 「お気に召したようで安心しました。ただ、残念なことに昨日の薬は在庫がないのですよ。その代わり、こちらはいかがですか?」  少女は昨日の薬と同じ小瓶を手にしている。瓶は同じデザインのようだが、中の液体の色は薄い紫色ではなく、葡萄のような色をしていた。 「昨日お渡ししたものより効果が高いものです。どうでしょう? 効果が高い分、お値段は少々張りますが。美しさの全盛期を取り戻せるなら安い買い物だと思いますよ」  少女は電卓を叩いて私に見せた。  値段は張る、と言われたので身構えていたが、表示された金額は目が飛び出るほどの価格ではなかった。むしろ、予想していた額よりも安い。今の財布の中身では買えないが、クレジットカードでいけるだろう。  少女の言う通り、人生をやり直せるなら、これくらいの金額安いものだ。 「買うわ!」  若さを取り戻して、満たされた人生を送るために。
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