魔女の薬

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 家に帰ったのは日付が変わる頃だった。  こんなに楽しい時間を過ごしたのはいつ以来だろうか。  薬を飲んで若返った後、私はバーへ向かった。1人でお店にいるなんて、楽しそうな周りと比較して自分の惨めさを再認識するだけの行為だった。  でも、今は違う。つい最近まで私に見向きもしなかった男達が、私を奪い合うかのように寄って来た。  若いとは、何て素晴らしいことだろう!  1人で入店した私の周りには、常に数名の男性がいた。私は適当に相槌を打って微笑んでいるだけで、周りが勝手に盛り上がってくれる。何て心地の良い空間なのだろう。  結局、バーで知り合った何人かの男性と連絡先を交換した。  また会おう、という一言を添えて。  それからは毎晩のようにデートをした。おしゃれなレストラン、高級なバー、テレビでも紹介された名店。色んな男性と色んな場所へ行った。    楽しい日々はあっという間だ。この数日で多くの男性と出会い、デートを楽しんだ。    仕事は適当な理由をつけて休んでいる。  大丈夫。貯金だってあるし、さっさと良い男を見つけて結婚してしまえばいい。  この若さと美しさで手に入らないものはない。  だが、不可解なことが一つ。  親密な仲になる男性がいないのだ。  独り身の寂しさを忘れられる時間があることは嬉しいが、私は早くパートナーが欲しい。  今時の人は恋愛に関して奥手なのだろうか?
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