魔女の薬

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 気を取り直して、いつものバーにでも行こうかと駅前を歩いていると、見知った顔を見つけた。  この前デートをした商社の男性だ。これから飲みにでも行くのだろうか。  今日は同僚と思われる男性と二人で歩いている。私は声をかけようと近くに寄るが、二人の会話が聞こえ、足が止まった。 「そういえば、この前バーで知り合った女の子とはどうなったんだ?」  同僚と思われる男性が話を切り出した。  きっと私のことだろう。彼は恋人と別れたばかりで、久しぶりに女性とデートをしたと言っていた。  私は声をかけずに、二人の会話に聞き耳をたてる。 「ああ、あの子ね……」  何故か彼は憂鬱そうな声をしている。溜息すら聞こえてきた。 「顔が好みだったから声をかけてみたんだけど、性格がね。一緒にいて楽しいことは楽しいけど、恋人同士とか結婚とか考えるとキツイかな」  衝撃だった。頭を石か何かで殴られたような。  え? どういうこと? あんなに楽しい時間を過ごしたのに? 「あの子、アラサーだよな? もっと若くていい子がいるって。合コンでもするか?」  彼の同僚の声が、さらに追い打ちをかける。こんなに若くなったのに、もっと若い子でないと意味がないの?  悔しい。悔しい。悔しい。
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