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魔女の薬
鏡をのぞくと、くすんだ肌とほうれい線の目立つ女の顔が映っている。
私の顔だ。
どう見ても「オバさん」の顔。
顔に刻まれた皺は、現実を突きつけているようで憎らしい。
仕方がない、もう50歳なのだから。
現在の状況を考えるとため息しか出てこない。
こんなはずじゃなかったのに。
若い頃はそれなりにモテていた。いつか高収入の男をつかまえて、悠々自適な結婚生活を送れると思っていた。
気付けば結婚適齢期はとっくに過ぎていて、旦那どころか恋人もいない。
いつか寿退職することを考えて入社した職場は、既に何十年と在籍している。適当に選んだ仕事に対して熱意が持てるわけもなく、ただ満たされない毎日が続いているだけ。
どこで間違えたのだろう。
若い頃に別れた男たちのことを思い出す。あの中の誰かと結婚していれば、また違った未来があったのだろうか。
少なくとも、今の寂しい状況よりは良い人生を送れていたはずだ。
あの頃に、若い頃に戻ってやり直したい。
あの頃の若ささえあれば。
解決しない悩みに脳内を占領されつつも、夕食の買い出しをするために、家を出た。
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