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少年は、またやってきた。
といっても、前とは違う姿で。記憶もない。それでも、あの少年だった。あいかわらず、糸に絡みつかれて芋虫になっている。
「巫女さま、たすけて」
「はいはい」
前のときより、いい家に生まれたらしい。衣が上等なものになっていた。
「すごい。巫女さまって本当に糸を操れるんだ」
どこかで聞いたような言葉だった。
「紡ぎの巫女ですから。ほら、暗くなる前に帰りなさい。賊に襲われますよ」
「えええー……、わかりました。今日は帰ります。代わりに、明日また来てもいい?」
「私の仕事を邪魔しなければ」
「やったあ」
くすくすと笑う少年は、今度はすこしばかり長く生きた。病だったと、糸を紡いで知った。
賊に殺されるのと、病に殺されるの、どちらがましだろう。私にはわからない。私はひとの世から外れ、糸を紡ぐために永遠に生きる運命にあるのだから。死というものがわからない。
私の指にも糸があれば、すこしは彼を理解できただろうか。
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