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少年は何度も姿を変えて、記憶を失っても、会いに来た。物好きな少年だな、と思う。
そのうち、彼が生まれたら糸を通してわかるようになった。彼が生を終えたとき、繭の中から彼の糸を丁寧に紡ぎ出し、ほかの糸とは別にとっておいた。
そのうち、繭の絡まりがひどくなってきた。
世が乱れている証だ。しばらく、糸紡ぎに精を出さねばならないだろう。これほど絡まった糸であれば、糸の持ち主たちの運命もこじれてしまっているはず。運命に翻弄される哀れな者たちのために、紡がなければ。
繭からふよふよとくず糸が降り注ぐ。紡げ、紡げと。
「わかっていますよ」
急かされて、私は糸車をまわす。
そうするしかない。ここで糸を紡ぐことが私の運命だから。
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