列車にて運命の出会い

1/9
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 山に囲まれた田園を走る二両編成の列車。その窓から大学生らしい男性が一人、外をぼんやりと眺めている。彼は携帯を取り出し、写真のアルバム画面を開いた。交際相手の女性と並ぶ、彼の写真がたくさんあった。温泉旅館前の二人、コーヒーカップに乗る二人、カフェの食べ物とピースサイン、彼女の照れた笑顔。  彼は深くため息を吐いた。その目には涙が浮かんでいる。彼は携帯から顔を上げ、周囲を見回した。  座席は列車の進行方向を向いているクロスシート。彼の席は二両目の中心、右列。他に乗客はほとんど見当たらず、最後列に老夫婦、車両の最前列左側に登山服の男性が一人いるだけだった。  彼は目をこすった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!