11人が本棚に入れています
本棚に追加
王の崩御は瞬く間に全土に広がり、神の義を語る諸国が連合軍を編成し始めた。騎馬の嘶きが、大地の轟きが私たちの罪を裁きにやってくる——。
恐怖による統一。権威の後ろ盾がなくなれば瓦解するのは当然の摂理。
出陣する貴方の背中を見送る。これが今生の別れになることは、互いに分かっていた。それでも、貴方は振り返りもしない。私もその背を追うこともしない。
私たちの味方は僅か数百人。何千、何万の軍勢に太刀打ちできる筈もなく——。
その時、激しい痛みが心の臓を貫いた。
嗚呼、今私の魂の片割れが息を引き取った——。
引き裂かれた魂。光と闇。喜びと苦しみ。愛と憎しみ。だけどそれも全て、貴方が私に与えたもの。私が貴方に与えたもの。
貴方のいない世界に、意味などなくて。
貴方のいない世界に、未練などなくて。
生まれた時と同じように、貴方の後を追って着いていく。それが私の運命。
私は懐から取り出した毒薬を飲み干した。転がる盃、溢れる血、罪の味。
喉の奥が焼けるように熱い。今にも噴火してしまいそうな火山のように。真っ赤な命が流れ出ていく。
鏡の前に這いずって、私は最後の力を振り絞って鏡に接吻を落とす。
最期の瞬間、急速に冷えていくのを感じながら。私は黒耀の瞳の中へ落ちていった——。
-了-
最初のコメントを投稿しよう!