オブシディアンの双子

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 王の崩御は瞬く間に全土に広がり、神の義を語る諸国が連合軍を編成し始めた。騎馬の(いなな)きが、大地の轟きが私たちの罪を裁きにやってくる——。  恐怖による統一。権威の後ろ盾がなくなれば瓦解するのは当然の摂理。  出陣する貴方の背中を見送る。これが今生の別れになることは、互いに分かっていた。それでも、貴方は振り返りもしない。私もその背を追うこともしない。  私たちの味方は僅か数百人。何千、何万の軍勢に太刀打ちできる筈もなく——。  その時、激しい痛みが心の臓を貫いた。  嗚呼、今私の魂の片割れが息を引き取った——。  引き裂かれた魂。光と闇。喜びと苦しみ。愛と憎しみ。だけどそれも全て、貴方が私に与えたもの。私が貴方に与えたもの。  貴方のいない世界に、意味などなくて。  貴方のいない世界に、未練などなくて。  生まれた時と同じように、貴方の後を追って着いていく。それが私の運命。  私は懐から取り出した毒薬を飲み干した。転がる盃、溢れる血、罪の味。  喉の奥が焼けるように熱い。今にも噴火してしまいそうな火山のように。真っ赤な命が流れ出ていく。  鏡の前に這いずって、私は最後の力を振り絞って鏡に接吻を落とす。  最期の瞬間、急速に冷えていくのを感じながら。私は黒耀の瞳の中へ落ちていった——。 -了-
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