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口に含むと、懐かしい味がいっぱいに広がった。ウスターソースの香ばしい香りが鼻に抜ける。よく母が作ってくれたチャーハンの味だ。うちのチャーハンは、最後にウスターソースを少し混ぜるんだ。
「紬のチャーハン、母さんの味だ」
紬が口を開く前に、スプーンがもう一口運ぶ。うん、おいしい。流れるように口元へとチャーハンが飛び込んでくる。
「え〜、弦のお母さんも同じチャーハンの素使ってたのかな」
目の前に座り、少しはにかみながらチャーハンを食べる紬が、かわいくてたまらない。「こんな簡単な物しか作れなくてごめんね」なんて、謝る必要なんてないし、もう食べることもないだろうと思っていた母の味を、一気に思い出させてくれた紬に感謝すらしている。
スプーンがお皿に当たってカチャカチャと奏でる音さえも愛おしい。二人で食べるチャーハンは幸せな気持ちを運んでくる。
「チャーハンの素もだけど、やっぱウスターソースかな」
中華料理屋さんで出てくるよくあるチャーハンとは違って、少し茶色い。ウスターソースが味の決め手。
「結局、ウスターソースが何にでも合うってことだよね。ポテサラにももちろんかけちゃうし」
「あ〜! ポテサラにウスターソースはうまい!」
「うちは天ぷらにもかけちゃう」
「え! 僕もだよ」
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