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学は帰りの地下鉄の車内で、阪神・淡路大震災と東日本大震災を思い出した。どちらも被害が甚大で、印象に残っている。関東大震災ほどではないが、多くの死傷者が出た。阪神・淡路大震災は生で見ていないけれど、東日本大震災の事は今でも印象に残っている。多くの人々が募金をしていた。それに、福島第一原子力発電所が事故を起こし、一部のエリアが入れなくなった。
東日本大震災関連で印象に残っているのは、2年後の2013年に東北楽天ゴールデンイーグルスが日本一になったのを思い出す。あれは本当に感動的だった。大震災を乗り越えての日本一だからだ。最後に田中将大が登板した時には感動した。この時はまだ生まれていなかったけれど、1995年の阪神淡路大震災の時にも、神戸に本拠地のあったオリックスブルーウェーブが『がんばろうKOBE』を合言葉に優勝、翌年には日本一を経験した。感じてはいないが、スポーツの力って、これだろうか?
と、学は考えた。まだまだ続く夏休み、気晴らしに神戸に行ってみようかな? 神戸に行けば何かを感じるかもしれない。そして、これからの人生の何かにつながるかもしれない。
翌日、学は神戸にやって来た。神戸はすっかり復興し、東京ほどではないが、多くの高いビルが立ち並んでいる。毎年1月17日、阪神・淡路大震災が起こった日になると、ニュースなどでその様子がやっている。地震の起こった早朝5時46分になると、祈りを捧げる人々を見ると、今年もまたこの日がやって来たと感じる。柱が倒れた高速道路、焼け野原になった新長田、何もかもが印象に残っている。これが現実なのかと思った。今思えば、関東大震災もこんな感じだったに違いない。いや、今以上にひどかっただろう。
学は六甲山に登った。ここからの景色は本当に美しいし、夜景はもっと美しいという。そこから眺めて、あの日の神戸の事を思った。突然の出来事で、神戸の人々はどう思ったんだろう。こんなにも多くのものが一瞬で奪われて、悲しかっただろう。だけどそれによって、人は一人で生きていけないと思っただろう。そして、万が一の備えの大切さを知った。だけど、東日本大震災でも多くの死者が出た。揺れは阪神・淡路大震災より大きかったという。そして、死者も多かったという。果たして、阪神・淡路大震災の教訓は生かされたんだろうかと思ってしまう。
次にやって来たのが新長田だ。新長田駅前は新しい建物が立ち並び、昔の面影は薄れている。大きなビルやマンション、真新しい商店街、すっかり変わってしまった。そして、公園にそびえる鉄人28号のモニュメント。それは、震災からの復興のシンボルとして新長田にそびえたっている。今日もモニュメントの前で多くの人が記念撮影をしている。その中には、鉄人28号と同じポーズで記念撮影をしている人もいる。
彼を見て、学は思った。彼らは、この鉄人28号のモニュメントが震災の復興のシンボルだと知って、撮っているんだろうか? どういう思いで、鉄人28号のモニュメントを撮っているんだろう。
学は地下鉄に乗って、ほっともっとフィールド神戸にやって来た。オリックスブルーウェーブが日本一になった時は、グリーンスタジアム神戸という名前だったという。オリックスブルーウェーブの事は知らなくても、それが合併した球団、オリックスバファローズなら知っている。2020年代になって、急速に強くなってきた球団だ。あの頃のオリックスブルーウェーブはすごかったと聞いている。メジャーリーガーになったイチローが活躍し、仰木監督の采配が素晴らしかったそうだ。だが、20世紀の終わりとともにイチローはアメリカに行き、2001年で仰木監督は退任、そこからずっと暗黒時代だったという。そんなオリックスブルーウェーブは、2004年の球界再編で近鉄バファローズと合併した。選手会やファンは反対したが、合併は避けられなかった。そしてその時、東北楽天ゴールデンイーグルスができたという。『がんばろうKOBE』で神戸の人々を勇気づけたオリックスブルーウェーブ。球界再編の荒波で消えていったけれど、その記憶はこの球場に残っているんだろうな。
こうして巡ってみると、変わっていく神戸を見て取れた。だけど、どれだけ変わっても、1995年1月17日の事は忘れないでいてほしい。1923年9月1日に起こった関東大震災や、2011年3月11日に起こった東日本大震災のように。
そしてまた、9月1日を迎えた。今日は防災の日、そして関東大震災が起きてちょうど100年が経つ。それを経験した人は少なくても、かつてこんな大きな地震があったんだと感じてほしい。
「また防災の日を迎えるのか」
東京に戻ってきた学は、自宅にいた。家の人々はいつものような日々を送っている。だけど、100年前は大変だっただろうな。大きな地震で建物ががれきになり、火災が起きた。
「今年で100年。あれから東京は変わった。だけど、失ってはいけない事もある。それは過去の記憶なのかな?」
学は思った。思えば、これまでに様々な事件、事故が起こった。だけど人々は、その教訓を忘れずに、様々な備えをしてきた。いつの時代も、備えというのは大切だ。備えあれば患いなし、それを大切にして生きていかなければならない。
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