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【三章:穿つ運命。】
「……は」
振り上げていた剣は、いつの間にか俺の指から抜け落ち、血溜まりの中に沈む。
俺は盾を放り、その場で膝をつきながら、彼女を抱き抱えた。
どういう事だ? 何故テラに、王印が?
状況が読めず、狼狽する俺の頬へ、血に塗れた指先が触れる。
今にも掻き消えそうな、か弱い熱。
その熱は、はじめて会ったあの時を思い起こさせ、俺は呆然と、彼女を見つめる事しか出来なかった。
「ふふ。そう驚く事も無いだろう。見た通り、私は王の所有物だ。もう用済みなようだがな」
「用、済み……?」
俺の問いに、彼女が応える。
「言い訳に過ぎない戯言も含まれるが」と、前置きをして。
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