【二章:ルークス王国騎士団】

6/6
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 俺は攻撃の手を止めずに、仕掛け続け──翼を斬り落とし、手を、爪を、牙を、足を、そして大きく膨れた、腹を引き裂いた。 【──】  声も無く、血溜まりの中で倒れ伏す竜は、ゆっくりとその姿を縮めてゆき、俺のよく知る女……テラの姿となった。  うつ伏せで倒れる彼女は、少しだけ此方に顔を向けると、あの時と似た笑顔を向け、「フォリア」と、俺の名を呼んだ。 「呼ぶな。穢らわしい竜が」  ほぼ無傷だった俺は、足取り軽くテラの元へと向かう。  殺せる。村の皆の敵を、討つ事が出来る。  血溜まりに足を踏み入れる。  この出血量だ。放っておいても死ぬだろうが、せめてものの情けとして、俺がこの手で屠り去ってやる。  俺は、王印の刻まれた剣を振り上げ、テラの首を刎ねようとするが……俺はその剣を、一向に振り下ろす事が出来なかった。  視界に入ったのは、テラの首元。    長髪の裏に隠れていた、王より授けられた剣と、その盾に刻まれた王印──  何故か彼女の首元には、それとまったく同じ王印が刻まれていた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!