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俺は攻撃の手を止めずに、仕掛け続け──翼を斬り落とし、手を、爪を、牙を、足を、そして大きく膨れた、腹を引き裂いた。
【──】
声も無く、血溜まりの中で倒れ伏す竜は、ゆっくりとその姿を縮めてゆき、俺のよく知る女……テラの姿となった。
うつ伏せで倒れる彼女は、少しだけ此方に顔を向けると、あの時と似た笑顔を向け、「フォリア」と、俺の名を呼んだ。
「呼ぶな。穢らわしい竜が」
ほぼ無傷だった俺は、足取り軽くテラの元へと向かう。
殺せる。村の皆の敵を、討つ事が出来る。
血溜まりに足を踏み入れる。
この出血量だ。放っておいても死ぬだろうが、せめてものの情けとして、俺がこの手で屠り去ってやる。
俺は、王印の刻まれた剣を振り上げ、テラの首を刎ねようとするが……俺はその剣を、一向に振り下ろす事が出来なかった。
視界に入ったのは、テラの首元。
長髪の裏に隠れていた、王より授けられた剣と、その盾に刻まれた王印──
何故か彼女の首元には、それとまったく同じ王印が刻まれていた。
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