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「……私が石碑の前にいた理由、言ってなかったな。あそこに眠ってるんだよ、我が同朋が。あの時、偶々奴の監視下から外れた時でな。命からがら抜け出したんだ。……そして、君と出会った」
「あの時は楽しかった。何より、嬉しかった。竜である事実を知らずとも、優しく迎え入れてくれた事が。友と過ごした日々を思い出したよ」
「しかし、王印は呪いだ。言い訳にしかならないが、村を襲ったのも、その呪いのせいさ」
「竜に襲われたとなれば、王国近辺の村や町は、王国から騎士を派遣するしか無くなり、高い税収がかかる。結局、村に住む人達を守る気なんて、更々ないんだよ」
「──全部、奴の掌の上さ。私は奴に、全てを奪われた。友を、子を、そして愛する者を。……だからこれは、せめてものの抵抗だったんだ。誰も来ないような場所で死のうって」
「けど奴は、それすらも許してくれないらしい。まさか、君が来るなんて思いもしなかっ──」
「黙れ」
テラを抱き締める。
失われていく熱を、血を、塞ぐ為に。
「黙ってくれッ……」
無駄な足掻きだった。
抱き締めた所で、血は止まらない。
消えゆく熱は、戻らない。
「頼むからもう、喋らないでくれ……」
嗚咽を抑え、声を振り絞る。
泣かないように、涙を流さないようにと堪える。
彼女をここまで痛めつけた俺に、涙を流す資格は無い。
けど、そう思えば思う程に、両の瞳から溢れる涙が、止まらない。止まってはくれない。
彼女は、そんな俺の涙を拭いつつ……最後の力を振り絞るように、口付けをした。
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