【一章:炎。】

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 村から聞こえる、悲鳴、叫声。   黙々と立ち込める黒い煙に、ごうっと燃え上がる紅い炎。  ()()は村を、そして村に住まう人々を(たちま)ち呑み込み、蹂躙してゆく。 「……何だ、これ」  思わずそんな声があがり、僕は森の奥から凄惨な光景を、見下ろしていた。  巨大な「(それ)」に、全てを壊されてゆく、その光景を。  竜は大きな爪で、母の腹を裂き、臓物を放り出した。  今度は鋭利な牙で、父の首を斬り、頭を噛み砕いた。  巨大な口で、まだ10歳にも満たない幼い妹を、頭から齧り付き、咀嚼した。  口から吐き出した炎で、村を赤黒く、死色に染めていった。  家族を。友を。村を。  その全てを壊し。殺し。焼いて。飲み込んで。  涙は出なかった。  今朝食したものも、吐き出す事は無かった。  理解が出来ず、それをする余裕すら無かった。 「……テラ?」  思わず溢れた、彼女の名前。  血や煤で汚れた竜は、僕の声に反応し、鋭い眼光を此方へと向ける。  青く輝く、美しい瞳をしていた。
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