【二章:ルークス王国騎士団】

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   裏切られた。  一年間、共に過ごしてきて。少なくとも僕は、(テラ)と心を通わせる事が出来ていたと、そう思っていた。  家族とも仲良くしていたし、他の人とも上手く付き合っていた。  あの時、楽しそうに笑う君の笑顔は、嘘偽り無い心からのものだと、そう思っていた。  けどそれは、僕の歪んだ脳から思考された幻想で、眼窩の奥で写し出した理想像に過ぎなかった。  それを想うと、あの時流す事が出来なかった涙が、自然と溢れてきた。  それと同時に、心の奥底で燃え上がる強い怨嗟が、燻っていた殺意へ、火を灯し出した。  家族を。友を。故郷を。    その全てを奪い去り、消え去った、憎き竜。  一度は愛した女だが、今では()にとっての、討ち滅ぼすべき敵でしか無い。 「殺してやる」  立ち上がり様に呟き、俺は孤児院を抜け出して、騎士団の元へと足を運んだ。  この手であの女を──テラを殺す為に。
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