愛と嗜好の間(はざま)で

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「いや、、、お願い、つけて」 キッチンカウンターに両手を着いたまま、彼女は声を震わせ懇願する。張りのある太腿を露出させ、突き出した下半身が艶かしい流線形を描く。その姿を目の当たりにし、燻っていた感情が一気に加速した。 「いや?嫌じゃないだろ、フフッ」 「だって、、、」 「君も好きだって言ったじゃないか。あれは嘘じゃないんだろ?クックックッ」 「ち、ちが、、、あ、あれは、、、」 彼女を自宅に招くのは今日が初めてだ。知り合って1年ほどで、きっかけは俺の一目惚れ。告白して交際はスタートした。 付き合って間もない頃、彼女にも伝えていたことだが俺は『生派』である。つけると硬さが損なわれるので好きではない。今まで付き合った女にも生でしか出したことがないのだ。 勿論、相手によっては拒まれることもあったが、強要したことは一度もない。説得して同意を得てから行為におよんだ。 今日もつけずに、存分に悦ばせてやるつもりだ。 「いいじゃん、生で。自然のまま味わいたいし、君にも味わって欲しいんだよ」 左手で握る突起物の反りに右手の人差し指をあてがって、見せつけるように指を上下させる。 彼女はそれを一瞥した後、ひとこと告げると顔を伏せてしまった。 「そのままは、、、やっぱり、いやなの」 逆らう女は嫌いじゃない。遠慮ぎみな抵抗に確かな手応えを感じ、お決まりのセリフを投げ掛ける。これで大概の女は落とせると自負していた。 「俺の好み、知ってるよね?君と一緒に楽しみたいんだよ。嫌なの?」 案の定、彼女は俯いたまま微動だにしない。沈黙が時間を支配し、いたずらに興奮を掻き立てる。 (よしよし、もう一押しだな) 勝利を確信し、気分は舞い上がる。上機嫌で仕上げの言葉を考えていると、徐に顔を上げた彼女はすぐさま口を開いた。 「お願い、つけて、、、」 俺は予期せぬ言葉に耳を疑う。聞き返そうかと迷っていると、第二波が押し寄せてきた。 「今日は、、、つけて欲しいの」 疑念が真相に変わる瞬間だった。 真剣な表情で俺の目をじっと見つる瞳には、一切の迷いは伺えない。 (おかしい、こんなことは初めてだ。この女、見かけによらず相当強情なんだな) 予想に反した手こずりに苛立ちを覚え、強引に押し付けてやろうかと思案するが、整った顔に視線を注いで考え直す。 (俺好みのいい女だ。無理強いして逃がすのは勿体ない。大声を出されて近所に聞かれても厄介だ。チッ、仕方がない、今日は折れてやるか。次は俺色に染めてやるからな、覚悟しておけよ) 俺は引き出しを開け、それを取り出す。巾着状の半透明なやつだ。彼女の望み通り、今日はつけることにした。 透き通った液面に反り返った先端をあてがうと、突起物は抵抗を受けることなく飲み込まれていく。根元まで収まったことを確認してから、囁くように問い掛けた。 「ほら、入ってるの、分かるよね?」 無言で頷く彼女に目配せした後、弾力のある膨らみに指を絡め、吸い付くような感触を手のひらで味わう。 ほぐすように揉みしだいていくと、彼女は言葉にならない声を漏らし、堪らず身体をくねらせた。 「はあん、、、そんなに触ったら、、、」 吐息が激しくなり、落ち着かない様子だ。 (イジくりまわした方がいいんだろ) 右手に伝わる柔らかい感触が脳を刺激し、誘発された興奮が突起物の動きに拍車をかける。 「ああん、、、も、もう、いい、、、」 その言葉を無視するように動きを加速させていくと、彼女は声を荒げた。肩を震わせ、眉をひそめている。 (もういいって?まだ始めたばかりじゃないか。これからだよ、ヒッヒッヒッ) 卑猥な音が鳴り始めると、突起物に突かれて摩擦に耐えられなくなったのだろう、透明な肌に雫が流れ落ちる。雫を辿って指を這わし、敏感な部分を探し当てると、彼女は切なさ混じりの声を漏らした。 「だめっ、、、も、もう、、、やめて!」 悲鳴に似た声が聞こえた次の瞬間、手の甲に鋭い刺激を感じて動きを止める。視線を落とすと、そこには彼女の手が重ねられていた。 「触り過ぎよ!そんなに揉むから袋破れたじゃない」 (あっ、、、) 床に広がる水溜まりを見て事態に気づく。 彼女は丈の短いペンシルスカートを気にもせず、腰に手を当て仁王立ちしていた。 「それからね、切ってから()けるのよ!」 (、、、えっ?) 彼女は眉間にシワを寄せ、首を傾げる俺を睨む。阿修羅のようなその顔にギクリとして、言葉の意味は理解できなかったが、逃げるように洗面所へ向かった。 「もういいわ、さあ頂きましょう」 シンクに置いた袋から突起物を慎重に取り出すと、彼女はそれをまな板にのせる。 「生で食べるより『浅漬け』にしたほうが美味しいのよ、キュウリは」 床の掃除を無事終え、包丁を握る横顔を見ながら俺は思う。 (浅漬けにしても、、、ちょっと早過ぎね?) その愛らしい顔に微笑みかけ、小さく頷いた。 おしまい
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