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☆3敬介
源五郎さんは…ホントにオレのじいちゃんの幽霊かは、わからないけど…似てる、とは思う。
とにかく無口だ。なんと幽霊と電話で話せる(源五郎さんは携帯がないので、備え付けの黒電話を源五郎さん専用にした)とわかったのに、喋らない。信じられない。幽霊だからか無口だからかはわからないが。
でも、雨の日に姿が見えた(足もあった)時から「元気か」とか「飯食えてるか」とポツポツ聞いてくるようになった。自分だって顔色悪いくせに。そういうトコ幽霊ぽいし、じいちゃんぽい。
幽霊の朝は早い(⁈)。庭で野菜作ったり、朝飯を作ってくれるようになった。結構うまい。煮干しでダシを取る味噌汁は、じいちゃんも作ってた。
寝る前に読書したり、静かに動くところも似てた。
ずっと心残りだった。
じいちゃんが家を出ていってしまう前に、何か出来なかったろうか。
当時オレは小2、何も出来なかった。
以後、取り返すように何かと首を突っ込んでは失敗した挙句、とうとう有金毟られてしまった。
『……馬鹿だな』
電話の向こうの源五郎さんは、オレの長い話を一言でまとめた。
ホントになー、と笑い飛ばそうとしたが、電話の向こうの音が気になった。
「源五郎さん、泣いてんの?」
『泣いてねぇ。あと俺ぁ、オメェのじいちゃんじゃねぇ。俺ぁ……俺が……』
返事を待ったが来ず、やがて電話は切れた。
悩んだ結果、メモにした。
『じいちゃんでなくても、オレ源五郎さんいい人だと思うし、お互い楽しく暮らしたいから、源五郎さんも遠慮しないで言いたいこと言っていいからな!』
テーブルに置いたメモは消え、水滴がぽたりと落ちた。
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