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☆6源五郎
目が覚めたら、朝だった。雨の音がする。
身体中痛くて臭い。なんとか起き上がると、敬介が横でごろ寝していて驚いた。
昨晩、雨が降らなくて本当によかった。リーダーに見つかったら、どうなっていただろう。
あの人は、行動が読めない。
昨日も、見えない何かに殴られたことより、俺が咄嗟に「逃げろ」と言ったことにキレた。
「源…僕よりお化けが心配なの?」
何かかけてやりたかったが、俺の寝具は汚れている。バスタオルをかけて、起こさないように部屋を出た。
身体を洗って着替え、ぎこちなく朝飯を作ってると、向こうの部屋がバタバタと騒がしくなった。起きたらしい。
「源五郎さん! 大丈夫か?」
「おう」
「…大丈夫って顔じゃないぞ」
「顔がマズいなぁ、元からさ」
身体中が痛かったが、その方が気が紛れた。リーダーに居場所がバレた今、混乱していられない。
「そんなんで今日仕事行けるか?」
「昨日クビになったから問題ねぇ」
「それはそれで問題あるだろ〜!」
「なに、儲からねぇんで辞めるつもりだった。丁度いい」
「なら先に転職先を決めてからクビになれよ!」
「なんだそれ」
あれこれ話しながら、二人で朝食を用意した。
食事の後で、汚れた布団シーツと毛布、服を洗濯機にかけた。いいと言ったのに敬介も手伝ってくれた。俺のシーツ替えが上手いとか、乾燥機能はどれだとか、今度から雨の日は部屋のどこに干すかとか、他愛もないことを話しながらすごした。
多分、今までで一番しゃべった。
昨日のことには、二人とも触れなかった。
※※※
チャイムが鳴った。
「オレ出るよ」
と素早く玄関に出た敬介が、何か叫んだ。慌てて駆けつける。
絶句した。
玄関にリーダーがいた。
髪を切り黒く染め、大きめの鞄を抱えて、地味なサラリーマンのような姿をしているが、リーダーだ。
もう来た。早すぎる。
そして、その後ろに、長い白髪をパーカーのフードからはみ出させている俺がいる。
……俺⁈
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