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☆7敬介
どうなってんだ?
多々良さんと一緒にやって来た男は、源五郎さんそっくりだった。
そっくり、と言っても顔と髪の色だけだ。白くて長い髪を前に流し、ウチの源五郎さんは絶対着なさそうな派手なパーカーを着て、耳や胸元にアクセサリーまで付けている。
「なんでぇ、ジロジロ見やがって」
声まで同じだ。
そっくりさんは、後ろから来た源五郎さんに驚いたけど、顔も同じことには気づかなかった。
「へえ。若白髪っているもんだな」
にしても、親戚がオレを探すのに使ったという探偵の多々良さんが、今更オレに何の用だろう。
「多々良さん、何かご用ですか?」
オレが聞くと、何故かコチラの源五郎さんがビクッとなった。
「いえね、浩さん(例の親戚)に逃げられて、お互い苦労してますから、その件で」
「帰ってくれ」
源五郎さんが割って入った。
「親戚を探すから、それまで料金立て替えろって話だろ、親戚とグルなのに。敬介、コイツの話は聞くな」
パーカーの源五郎さんが襲いかかったが、ウチの源五郎さんは軽くいなして床に組み伏せた。えっ強いな⁈
「てめ…っ!」
「すみませんね、ウチの部下が失礼を。ゲンくん、やめなさい」
多々良さんがそう言うと、ゲンくんも大人しくなり、源五郎さんも手を離した。
「鏑矢さん、この方は?」
「あ、同居人です」
「ではその同居人さんにご説明いただけませんか、我々のことを」
「知ってら。興信所を騙ったクズの集まりだ」
多々良さんはゲンくんをまず止めてから、源五郎さんに近づいた。
「お顔、痛そうですね。お気の毒に。けど、よく見るとウチのゲンくんに似ていますね…何者です、アナタ?」
源五郎さんは、腫れた顔を歪ませた。笑ったのかもしれない。
「俺も源さ。きっと…別の世界の」
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