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☆8源五郎
敬介が幽霊、ということに、違和感があった。
だがそれは罪からの逃げだ、とも思った。
けど、まだ生きてるリーダーと俺が現れたなら。
まるで、読んだSF小説のように。
敬介は、俺が殺した奴の、別の世界の姿で。
訪れた二人は、別の世界の俺と、リーダーで。
この家は、雨が降る時だけ世界が繋がる…の、ではないか。
あっちの俺たち、仲良いな。
こっちより幸せな世界なんだろう。
※※※
「多々良さん、大事な話あんだろ。その間、俺コイツと遊んでら」
「雨なのに元気ですね。無茶しないように」
あっちのリーダーは敬介と家に入った。
雨は小雨になっていた。
玄関の前で軽く手合わせした。
リーダーに付いてるだけあって、向こうの俺も強かった。だが、街のヤンキーの中では、だろう。向こうでの仕事も、その程度なのかもしれない。
「何が別世界の俺だよ、だったらオメェなんで多々良さんを守ってねえんだ!」
「守ってたさ。けど…喧嘩も暴れんのも好きじゃねえんだ」
言って自分で驚いた。そうなのか。
「ヘタレかよ! 俺は違う、あの人のためなら何だってやってやる!」
「殺しもか」
「あったりまえだろ! 多々良さんの邪魔するならオメェも殺してやらぁ!」
「誰を殺すって?」
肌が泡だった。
最悪だ。奴の真後ろにいる。
引き寄せて一緒に地面に倒れ込んだ。すかさず蹴り飛ばして追撃を避けた。間一髪。
「なんで邪魔するの、源?」
「リーダー…!」
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