第一章 無限海水浴場の闘い その3

3/11
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
「皇帝さま~ぁ」  情けない声を出すのはハッカ嬢───、まぁ、元々、瞬時変態人造人間(メタモルフォーゼアンドロイド)のハクア君なのだが・・・(元の性別は・・不明) 「アッツアツの汁ありインスタントうどんじゃ~、この暑~い浜辺では一杯も売れませんよね~? 皇帝様にそんな仕事を押し付ける訳にはいきませんのでェ~」  彼女はそう言いいながら、渋々ながらもアッツアツの汁ありインスタントうどんの背負子(しょいこ)に手を伸ばしたのだが・・・  その手首をサリタル皇帝がすばやくグイッと掴む。 「一介のアンドロイドに・・いや、可愛いお嬢ちゃんのハッカ嬢に、そんなキツイ仕事を押し付けては皇帝の名折れだ!・・この私がアッツアツの汁ありインスタントうどんを売ろう!!」  なんと、サリタル皇帝はハッカ嬢を遮るように、すばやくグィッと背負子を背負い込んだ。 「まぁ・・ありがとうございますぅ~。皇帝様ぁ!・・うわぁ~ラッキー!」  満面の笑みのハッカ嬢。彼女の最後のフレーズにやや繭をひそめる皇帝であったが、男に二言は無いというような表情を浮かべながらルットリトルに向き直る。 「侍従長ルットリトル・・・このうどんの販売ノルマはいくつなんだ?」 「フォッ、フォッ、フォッ」  例の妙な笑い声をたてる老人ルットリトル。 「腰ンところにぶら下がっておる帳面をみるのじゃ!・・そこにうどんの作り方も売価もストック数も書いてあるでの・・・なお、タイムリミットは空にある二重太陽のうちの小さい青い方が、大きいオレンジ色の周りをグルリと一周して正面に来るまでじゃ!」 「え? 二重太陽の青い方? 確かに今はオレンジの右斜め後ろにあるが・・一体あとどれくらいの時間で正面に・・」  濃い深緑色のサングラス越しに手を額にかざしながら二重太陽を見て問いかけるサリタル皇帝───、ルットリトルの返事が無いので、再度、前を見ると・・・侍従長の老人はサマーチェアもろとも煙のように消えていた・・・
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!