黒田くんは運命否定派

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 私はぼんやり前の風景を眺めた。秋晴れの日差しがアスファルトと芝生に降り注ぐ。少し離れたところに半分色づいたイチョウがあり、地面にもチラホラ黄色い葉が落ちていた。  無視できないのが斜め前だ。このキャンパスには卒業生が寄贈した立体アートがいくつかある。すぐ近くにも、大きな額縁をひねったような凡人には理解できない物体が置いてあった。  秋だなぁ、と抹茶ラテをまた一口。そこへ、「ドッペルゲンガーって知ってる?」というアート以上に謎な質問が飛んできた。 「自分と同じ顔の人なんだけど、それもある意味運命的だろ?」 「黒田くん、詳しいんだね……」 「でも、最近はフェイク画像とか簡単にできるし、ありがたみがないっていうか。なんなら、メタバース空間だったらドッペルゲンガー大量にいそう」 「……」 「占いで運命の人を当てたりするけど、アレもそれっぽいこと言ってるだけだし。占い師によって言ってること違うからな」  ミルクティーを飲みつつ、黒田が運命の相手について淡々と否定していくのを、私はポカンと聞いていた。相当ひねくれた性格みたいだ。  でも、もしかして、黒田は知っているのだろうか。  
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