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日が傾いてきたし散歩でもしようと言われ、歩いた先にあったのは遊園地だった。
「ここ入園料取られないから気楽に入れるんだよね。観覧車だけ乗っていこうよ」
高いところ平気、と聞かれうなずく。きれいな景色を見渡せる観覧車は遊園地の中で一番好きだ。
狭いゴンドラの中は、日常から切り離されたようだった。
「ねえ、ムラサキって元彼何人いるの」
「ん。デート中に元彼の話してもいいの」
「私は別にデートと思ってないからね?」
「はいはい。こんくらい」
ムラサキはパーを私に突き出した。
「五⁉︎」
「初めて彼氏できたのが中学でそこからほぼ誰かと付き合ってる状態続いてるから、こんなもんだって」
「今日のプラン立てられたのも、今までいろんなところ行ったから?」
「うん。今まで行ったところ参考に組み立てたら、元彼との夏の思い出総集編みたいになっちゃった」
「うわあ。聞かなきゃよかった」
「頂上だよ」
外に目をやると、地上一面が夕陽に照らされていた。
「きれーい……」
諸々の気まずさはあるものの、この眺めは純粋に好きだ。下りの間は、なんとなく黙ったままガラスの向こうを眺め続けていた。
観覧車を降りたあと、聞きそびれたことを聞く。
「ムラサキなりの、彼氏途切れさせない秘訣ってあるの」
「んー。普段のちょっとした心掛けと、いざというときの積極性?」
抽象的すぎるわと突っ込んだ私を、ムラサキが夕日ごとカメラにおさめる。
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