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私が葬儀の仕事をしたいのは、守護霊との別れの瞬間に立ち会うためだ。
しかし私は守護霊が見えない。だから横にいる均が教えてくれる。
他人の別れに立ち会って、私は何をしたいのだろう。
答えは多分、均との別れに思いをはせるためだ。
私は均が守護霊だということをよく忘れる。食卓で均の分の夕飯が並んでいないことに違和感を覚えたり、友人が私の膝にふざけて座ったとき、体重が膝を圧迫したことが驚きだったりと、均を基準に物事を考えることが多いのだ。
それは均が人間の守護霊だからだろうか。
他の人は守護霊のことをどう思っているのか。
町屋さんはゴキブリとインコをどう捉えているのか。
わからないことだらけだ。
「あ」
均が声を上げた。
「思い出したの?」
聞くと、
「うん」
「どんな?」
「私がなをについた日」
「生前のことじゃないの?」
均は私の頭の上を浮遊する。
「いやあ、この子を守るのか、って思ったね」
「何それ」
「この子を守るのが、私の第二の人生なんだって」
均はそれ以上何も言わず、大学の門を先に飛んでいった。
私は大学生になった。
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