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「大人一枚、お願いします」
私が声をかけると、チケット売り場の奥から30代くらいの男の人が顔をだす。館長の安達さんだ。
「お仕事お疲れ様。今日もゆっくりしていってね」
そう言って入場券を手渡した。
「それでは今日の星空を眺めてみましょう」
安達さんの穏やかな声を聞きながら、私は頭上に広がる満点の星空をぼんやりと眺めた。
プラネタリウム、30分300円。行政が運営しているこのプラネタリウムは、目新しいプログラムこそないが値段が安いため、日中は地域の家族連れでにぎわっているのだという。
でも私がここを訪れるのは決まって日曜の夜。「ナイトプラネタリウム」が行われる時だけだ。
「皆さんの真上には秋の四辺形が見えますね」
今回も来ているのは私一人だけ。暗いドームの中で、星のわずかな明かりと安達さんの声が私を包んでいる。まるで空に浮かんでいるみたいな、そんな不思議で心落ち着く時間。
「今日は秋の四辺形を構成する星座に関する話をしましょう」
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