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あたりが明るくなって、私は目を覚ました。
「今日もよく寝てたね」
ニコニコとした表情で安達さんが私の側にやってきた。
「すいません、毎回毎回……」
「いいのいいの。理香ちゃんがちょっとでも元気になるならそれで充分」
「ありがとうございます」
ずっと不眠で悩んでいたけど、仕事終わりにふらっと訪れたこのナイトプラネタリウムで眠ってから不眠の症状が緩和するようになった。
安達さんの声は私にとって、お薬みたいだ。
それ以来、週一回ここで寝落ちするのが習慣になっていた。
「それにしても、今日は寝るのが早かったね。お仕事大変なの?」
「はい。受験が近づいてきて、生徒も先生も緊張感が増してきたというか……」
塾講師として働き始めて二年目。今年からは受験生の生徒も受け持つことになって、他人の人生を背負っているという責任感に日々押しつぶされそうになっていた。
「そっか。頑張ってるんだね」
この優しさに私は支えられている。
前に「毎回私しか来てないのに上映してもらうのは申し訳ない。せめてもっとお金を払う」と安達さんに話したときがあった。でも安達さんは「お金は日中の上映回分で間に合ってるから大丈夫。これは私の趣味みたいなものだから」と言って申し出を断った。ナイトプラネタリウムの時は安達さんが一人で運営している。
優しさに甘えてしまっているのは分かっているけど、この時間がないと私は明日からも気を張って生きていけなかった。
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