天球の夜明け

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 翌週、いつものように私はプラネタリウムを訪れた。 「大人一枚、お願いします」  奥から出てきたのは、知らない若い男の人だった。 「君が『眠れる天球のお姫さま』かぁ。安達さんから話は聞いてますよ」 「なんですかそれ!?」  変な呼び名に思わず声をあげた。 「私も詳しいことはよく分からないんですが。安達さんが嬉しそうによく話していましたよ」  お姫さまって……幼少期以外に呼ばれたことのない言葉に思わず顔が熱くなった。 「今日、安達さんはいないんですか?」 「今週からご家族の事情で一か月休職しているんです」 「そうなんですか……」 「それで申し訳ないんですけど、ナイトプラネタリウムはしばらくの間お休みさせていただきます。安達さんじゃないと星座の解説できないので」  そう言われて仕方なく施設を後にした。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加