火曜日のキッシュ

8/8
前へ
/8ページ
次へ
 とりあえずキッシュにフォークを突き立てて、口へ運ぶ。  やっぱり豚のテリーヌのほうが美晴には口に合ったけれど、運命が回りだしてしまったのだからもう仕方ない。  本当に仕方ないだろうか。   「……あー、うん。とりあえずさ」    美晴は手を差し出した。   「あたし、美晴。よろしくね」  この関係に名前を付けるのは癪に障るが、お前が望むならそうしてやろうと美晴は思う。  想いを込めた片手に、蒼佑が泣きそうに、だけど、嬉しそうに笑ったから。  つぶれた豚のテリーヌを、美晴は許すことにしたのだ。        おわり  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加